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放射能と魚と市民社会

フクシマの放射能の問題は様々な面において影響がある。例えば食物による内部被曝の問題としてまだまだ尾を引いている。福島産はもちろん隣りの県の茨城産、栃木産でも野菜はなかなか売れないと聞いている。風評被害と言えるし、生産者の皆さんには本当に気の毒だ。では、魚はどうする。どこで獲れたかはある程度特定できるが、どこを回遊してきたのかは分からないから厄介だ。筆者自身は年齢も年齢だし、魚好きなので、どうせ海の放射能汚染は大したことはないだろうと高をくくって、平気で食べていた。特に大好物のサンマは旬なので10月の日本滞在中4週間で15匹ほどたべたと思う。大船渡には新鮮な秋サンマが水揚げされるし、炭火で焼かれたのを見れば、舌なめずりをし馳走になった。市内の立根町、長泂仮設住宅の皆さんに振る舞われて、それぞれ3匹も平らげてしまった。脂が乗っていてとてもおいしかった。ところが、今回の滞在中こんなおいしいサンマを食べないどころか、太平洋側で獲れる魚は食べないという人に何人か出会った。彼らに言わせると、政府が発表する数値はまず信用できないという。たしかに昨年の3月以来政府の危機対応と対策は信用するにはまったく心もとないレベルにある。人間は一度信用しなくなると、その回復は非常に難しい。公式発表の数字をまったく信頼しないとなると、じゃ何を信頼すべきなのか。それに取って代わる測定機関があるのかということになる。

今回の滞在中にボランティア活動の後昔のドイツ人教え子を札幌に訪ねた。9月にベルリンでお目にかかった「福島の子どもたちをまもる会北海道」の皆さんを札幌に訪問し、そこで市民の皆さんが自分たちで測定機器を購入し、食べ物の放射能汚染を測っているグループに出会った。さっぽろ市民放射能測定所の「はかーる・さっぽろ」である。代表の富塚とも子さんにお会いし、測定のデモをしていただいた上に、お話を伺った。測定機器はベラルーシュから購入したもので、500万円もしたそうだ。みなさんの活動に頭が下がった。このような市民のグループがたくさん誕生し、ネットワークを組織し、毎日の食べ物を測定し、発表してくれれば、市民の皆さんも疑心暗鬼に陥らないで食べものを口にできるだろう。同時に政府が問題のあるデーターは発表しない(筆者は政府がデーターをねつ造しているとは思わないが)などの反市民的な作為行動は取れなくなる。このようにして政府を包囲するのが成熟市民社会への第一歩になるだろうと確信している。

ふくざわ